空き室対策にはならない「民泊」
不動産業界でも話題?「民泊」「AirBnB」とは・・・
先日大阪で「民泊条例」が可決されました。これは今話題になりつつある民泊を条例で特別に認めようというものです。
そもそも「民泊」とは簡単に言えば、個人や法人が所有する家や部屋を所有者が使用していない時に第三者に有料で提供することを指す(すごくざっくりですが・・・)。そしてそういった部屋や家を紹介しているサイトとして一番有名なのが「AirBnB」というサイトである。先ほど確認してみると福岡市内だけでも300件以上の物件が登録されていた。
ただ日本においては第三者に部屋を提供し宿泊費を得るには「旅館業法」上の許可が必要で推測ですが、上記AirBnBに登録している物件のほとんどは無許可で宿泊者を募集している状態と思われます。旅館業法上の宿泊施設としての許可をもらうためには床面積の条件や建築上、防犯上といった様々な要件をクリアする必要があり、AirBnBに登録されている物件でこれらの要件をクリアするのは非常に大変ではないかと思います(そこまでして宿泊施設を提供しようと考える人もあまりいないかもしれません)。
日本政府は2020年オリンピックに向けて外国人観光客の誘致を大々的に進めている反面、増加した観光客に宿泊施設の数が追い付いていない状況です。こういった状況の中で政府の中でも「民泊」解禁の話が浮上してきているところで、大阪府はその流れに先行する形で特例として「民泊」を認める条例を可決したようです。
ただしこの流れが今後全国へ波及していくかというとそうはならないと考えられます。その理由として今回の「民泊条例」は従来の「旅館業法」の特例で、この条例制定の根拠となるのは安倍政権が目玉政策に掲げている「国家戦略特区」に基づいた法律からきています。つまり大阪府は国家戦略特区に指定された地域だからこの「民泊条例」が制定できたと考えられるのです。
では福岡はどうかというとなんと福岡市は国家戦略特区に指定されています。ただ、大阪府の場合、国に国家戦略特区として指定される際に基本戦略(規制改革案)の中に「外国人の滞在に対応した宿泊施設の提供(旅館業法)」というものを明示していましたが、福岡の場合そういった項目がありません。よって福岡で大阪と同様の条例が可能なのかどうかが問題になりそうです。
また、大阪の民泊条例は6~7泊以上の滞在が対象となっていますがこれはそもそも国家戦略特区の基本事項として1週間から10日以上の外国人滞在者を対象とするように定められているからだと考えられます。もし福岡で民泊条例が制定されるとしてもこの部分はおそらく踏襲されるでしょうから、条例で可能になる宿泊は1週間前後以上の滞在を受け入れる施設となるでしょう。これは現状のAirBnBの登録物件で想定している宿泊者(だいたい1泊~3泊程度の宿泊が大半と考えられます)とはかけ離れたものになると思われます。
つまり民泊条例がもしできたとしても現状のAirBnB登録物件がそのままめでたく営業できる事例はほとんどないのではないかなと思います。
最後に、あくまで私の考えですが現在AirBnB上に登録されている物件のほとんどは旅館業法違反状態だと思います。また福岡県は、「無許可営業などの旅館業法違反事例について県は、「直ちに保健所による立ち入り検査を行い、厳正に対処する※参考」との方針を示しています。安易に空き室対策としてAirBnBなどを利用するのは現状非常にリスクが伴うと思われますので慎重に熟考をお願いいたします。
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